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遺留分(いりゅうぶん)

民法改正前の遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)とは?

2019年(令和元年)7月1日より前に開始された相続について,遺留分を侵害する遺言(遺贈)や贈与等があった場合,遺留分を侵害された相続人(遺留分権利者)は,その遺贈や贈与を受けた受遺者・受贈者に対し,遺留分侵害の限度で遺贈や贈与の効力を失わせる(減殺させる)ことを請求できます。これを「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」といいます(改正前の民法1031条)。

ここでは,この遺留分侵害額請求について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

(著者:弁護士

遺留分減殺請求とは

改正前の民法 第1031条
遺留分権利者及びその承継人は,遺留分を保全するのに必要な限度で,遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。

兄弟姉妹を除く法定相続人には,相続財産に対する最低限度の取り分として,遺留分(いりゅうぶん)が保障されています(民法1042条)。

この遺留分の保障を実現するための制度として,現行民法(令和元年7月1日施行)では,遺留分侵害額請求という制度を設けています。

この遺留分侵害額請求は,令和元年7月1日以降に開始された相続について適用されます。

他方,令和元年7月1日より前に開始された相続については,改正前の民法の規定が適用されます。

この改正前の民法において規定されていた遺留分保障を実現するための制度が「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」です。

令和元年7月1日より前に相続が開始された場合は,この遺留分減殺請求によって遺留分権を行使することになります。

すなわち,遺留分減殺請求とは,遺留分を侵害する遺言(遺贈)や贈与等があった場合に,遺留分を侵害された相続人(遺留分権利者)が,その遺贈や贈与を受けた受遺者・受贈者に対し,遺留分侵害の限度で遺贈や贈与の効力を失わせる(減殺させる)旨を請求することをいいます。

>> 遺留分(いりゅうぶん)とは?

遺留分減殺請求権の法的性質

遺留分侵害を理由として相手方に遺留分減殺を主張することができる実体法上の地位を「遺留分減殺請求権」と言います。

この遺留分減殺請求権の法的性質は,形成権です。

遺留分権利者から相手方に対する遺留分減殺請求の意思表示によって,遺留分を侵害する遺贈または贈与が,その侵害の限度で効力を失い,目的の財産上の権利は遺留分権利者に復帰します。

すでに目的財産が受遺者や受贈者に引き渡されている場合,遺留分減殺請求をした遺留分権利者は,別途,受遺者や受贈者に対し,目的財産の返還請求等をすることになります。

つまり,厳密には,形成権である遺留分減殺請求権と,減殺請求後に生じる目的財産の返還等の請求権とは,別の請求権であるということです。

したがって,遺留分を侵害された相続人は,まず遺留分減殺請求権の意思表示を行い,さらに,その減殺によって復帰した財産の返還や支払いを請求をすることで財産を取り戻すことができるということになります。

ただし,実際には,遺留分減殺請求権の行使と同時に財産の返還等も請求することになるでしょう。

遺留分減殺の請求権者

遺留分減殺請求ができるのは,遺留分権利者とその承継人です(改正前民法1031条)。

遺留分権利者となれるのは,「兄弟姉妹以外の相続人」です(改正前民法1028条柱書)。したがって,相続人であったとしても,兄弟姉妹は遺留分減殺請求をすることはできません。

この兄弟姉妹以外の相続人の承継人も,遺留分減殺の請求権者となります。例えば,遺留分権利者である相続人を相続した相続人などがこれに当たります。

>> 遺留分減殺請求できる遺留分権利者とは?

遺留分減殺請求の相手方

遺留分減殺請求の相手方は,遺留分を侵害する遺贈を受けた受遺者または贈与を受けた受贈者です(改正前民法1031条)。

相続分の指定を受けた相続人および相続させる旨の遺言による受益相続人は,ここで言う受遺者に含まれると解されています。

死因贈与については,争いはあるものの,贈与に含まれ,ただし,生前贈与よりも先に遺留分減殺の対象になると解されています(東京高判平成12年3月8日)。

遺留分減殺の順序

遺贈と贈与があるときは,まず遺贈から減殺し,それでも不足する場合に贈与を減殺します(改正前民法1033条)。

遺贈が複数ある場合は,遺贈の目的の価額の割合に応じて減殺します(改正前民法1034条)。

贈与が複数ある場合は,後の贈与から順次前の贈与を減殺していきます(改正前民法1035条)。つまり,時期的に新しい贈与から先に減殺していくということです。

なお,贈与に生前贈与と死因贈与がある場合には,死因贈与は,遺贈に次いで,生前贈与よりも先に減殺の対象になると解されています(東京高判平成12年3月8日)。

相手方の利益の保護

受遺者や受贈者の都合を考慮するとともに,遺留分権利者の恣意的な権利行使や遺産分割内容の先取りを防ぐため,遺留分減殺請求においては,遺留分権利者は,減殺の対象とする物件を選択することはできないと解されています。

また,減殺請求を受けた受遺者や受贈者は,対象物件の現物を返還するのに代えて,価額を弁償することも許されます(改正前民法1041条)。

加えて,受遺者または受贈者は,対象物件のうちで価額弁償するものを個別に選択することができると解されています(最三小判平成12年7月11日)。

遺留分減殺請求の効果

遺留分権利者から相手方に対する遺留分減殺請求の意思表示によって,遺留分を侵害する遺贈または贈与は,その侵害の限度で効力を失い,目的の財産上の権利は当然に遺留分権利者に帰属します(最二小判昭和51年8月30日)。

そのため,遺留分権利者固有の財産となり,遺産分割の対象にならないと解されています(最二小判平成8年1月26日)。

減殺請求により目的財産は遺留分権利者に帰属することになりますから,目的財産が受遺者や受贈者のもとにある場合,遺留分権利者は,減殺請求により取り戻した権利に基づいて,目的財産の現実の返還等を求めることになります。

この場合,受遺者または受贈者は,目的財産が特定物であれば,その現物を返還するのが原則です。

ただし,前記のとおり,受遺者または受贈者は,現物の返還をする代わりに,目的財産の価額で弁償することが許されています(改正前民法1041条)。

遺留分減殺できる範囲(遺留分侵害額)

遺留分減殺請求によって減殺できるのは「遺留分侵害額」の範囲です。遺留分侵害額は,以下の手順で計算します。

  1. 遺留分権利者個々の「個別的遺留分」を計算する。
    【総体的遺留分 × 法定相続分】
  2. 遺留分算定の「基礎財産」を計算する。
    【被相続人が相続開始時に有していた財産 + 生前贈与財産 - 相続債務の全額】
  3. 遺留分権利者の具体的な「遺留分額」を計算する。
    【基礎財産 × 個別的遺留分】
  4. 遺留分額から,「遺留分権利者が受けた遺贈・特別受益に該当する生前贈与の額」および「遺留分権利者が相続によって取得すべき遺産の額」を控除し,「遺留分権利者が負担する相続債務の額」を加算して,「遺留分侵害額」を計算する。

まとめると,遺留分侵害額の算定式は以下のとおりとなります。

【遺留分侵害額 =(被相続人が相続開始時に有していた積極財産 + 生前贈与財産 - 相続債務の全額)× 総体的遺留分 × 法定相続分 - 遺留分権利者が受けた遺贈・特別受益に該当する生前贈与の額 - 遺留分権利者が相続によって取得すべき遺産の額 + 遺留分権利者が負担する相続債務の額】

>> 遺留分侵害額はどのように計算するのか?

遺留分減殺請求の方法

遺留分減殺請求の方法に,特別な規定はありません。

前記のとおり,遺留分減殺請求権は形成権ですから,相手方に対して遺留分侵害額を請求するとの意思表示をすれば足ります。

実務では,意思表示の方法として,配達証明付きの内容証明郵便によって行うの通常でしょう。

遺留分減殺請求の意思表示をした後に物件の返還等を請求する方法についても特別な定めはありませんので,裁判外での交渉や調停・訴訟によって請求することになります。

なお,遺留分減殺請求は,家庭に関する事件であり,家事調停をすることができる事件に該当するため,調停前置主義の適用があると解されています(家事事件手続法257条1項)。

したがって,遺留分侵害額請求をする場合には,まず家事調停(遺留分減殺による物件返還請求調停)を申し立てる必要があります。

調停において話がつかなかった場合には,遺留分侵害額請求の訴訟を提起することになります。この訴訟の管轄は,家庭裁判所ではなく,簡易裁判所または地方裁判所です。

>> 民法改正前の遺留分減殺請求の方法・手続とは?

遺留分減殺請求の期限

遺留分減殺請求権は,相続開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年間が経過すると,時効によって消滅してしまいます(改正前民法1042条前段)。

また,相続開始や遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知らなかった場合でも,相続開始時から10年間が経過すると,遺留分侵害額請求をすることができなくなってしまいます(改正前民法1042条後段)。

したがって,遺留分減殺請求を考えている場合には,これらの期限に注意しなければいけません。

ただし,前記のとおり,遺留分減殺請求権と,減殺後の物件返還等の請求権は別の債権です。そのため,遺留分減殺請求の期限と物件返還等の請求権の期限は別です。

したがって,相続開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間ないし相続開始時から10年間の期限内にしなければならないのは遺留分減殺請求だけであり,その後に行う返還請求等までこれらの期限内にしなければならないわけではありません。

遺留分減殺後の請求権が金銭債権であれば,一般的な債権の消滅時効が適用されます。

また,遺留分減殺後の請求権が所有権に基づく物件返還請求や登記請求であれば,消滅時効にはかかりません。

2019年(令和元年)7月1日以降に相続が開始した場合

前記のとおり,遺留分減殺請求の適用があるのは,2019年(令和元年)7月1日より前に相続が開始していた場合です。

相続の開始が2019年(令和元年)7月1日以降である場合には,遺留分減殺ではなく,遺留分侵害額請求によって遺留分権を行使することになります。

>> 遺留分侵害額請求とは?

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