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遺言の作成と執行

「相続させる旨の遺言」とは?

共同相続人のうちのある特定の相続人に対し,特定の相続財産を,遺贈ではなく「相続させる」とする内容の遺言のことを「相続させる旨の遺言」と呼ぶことがあります。判例・通説(遺産分割効果説)によれば,相続させる旨の遺言は,相続人間でこの遺言と異なる遺産分割をすることはできず,遺言の効力発生時に,対象となる相続財産が特定の相続人に承継される効果を生じると解されています。また,承継を受けた相続財産が不動産であった場合,承継を受けた相続人は,単独で相続登記をすることができ,登記なくして第三者に所有権を対抗できると解されています(ただし,改正民法では,法定相続分を超える部分については,登記がなければ第三者に対抗できないと規定されることになっています。)。

ここでは,この「相続させる」旨の遺言とは何かについて,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

(著者:弁護士

「相続させる」旨の遺言とは?

ある特定の財産を,ある特定の相続人だけに承継させたいという場合,遺贈をするということが考えられます。すなわち,ある特定の財産を「●●に遺贈する」というように遺言するということです。

ところが,遺贈の場合,承継させたい財産が不動産であると,他の共同相続人とともに不動産の所有権移転登記をしなければなりません。

そのため,他の共同相続人が反対すると,登記を移転させるのが難しくなるという難点があります。

これに対して,相続という形での承継であれば,その特定の不動産を承継した相続人が,他の共同相続人がいなくても単独で登記を移転できます。

また,かつては,相続人に対する遺贈の場合の方が,相続によって承継される場合よりも,かなり不動産登録免許税が高く設定されていました(現在では,相続人に対する遺贈も相続も登録免許税は同額になっています。)。

そのため,遺言者(被相続人)からは,遺贈ではなく,何とか,相続という形で,特定の相続人に対して特定の財産を承継させたいという希望がありました。

そこで実務において生み出された技法が,「相続させる」旨の遺言です。要するに,特定の財産を特定の相続人である「●●に相続させる」と遺言するということです。

登記実務においても,この相続させる旨の遺言が尊重され,遺贈ではなく相続させる旨の遺言である場合には,その承継を受けた相続人が単独で所有権移転登記をすることができ,しかも,登録免許税も相続として扱われるようになりました(昭和47年4月17日民事甲1442号民事局長通達)。

したがって,現在では,ある特定の相続人に対して,相続財産のうちの特定の財産(特に不動産)を譲り渡したいという場合には,遺贈の方式ではなく,相続させる旨の遺言とするのが通常でしょう。

※相続人でない第三者に相続財産を譲り渡すには,遺贈の方法をとる以外にありません。相続人ではないのですから,相続させる旨の遺言はもちろんできません。

「相続させる」旨の遺言の効力

前記のとおり,登記実務上では,相続させる旨の遺言は相続の効力を有する者と同様に扱われていました。

もっとも,法律上の議論においては,相続させる旨の遺言をどのように扱うべきかという点について各種の見解がありました。

遺産分割方法指定説

これは,相続させる旨の遺言を,遺産分割方法の指定と考える見解です。遺産分割方法指定説によれば,特定財産が不動産である場合,その承継を受けた特定の相続人が単独で登記を移転できることになります。

しかし,遺産分割方法の指定と考えると,遺産分割が成立するまでは,確定的な権利を取得できないということになり,遺言の趣旨に反することになる可能性があり得ます。

特定遺贈説

これは,相続させる旨の遺言とは,特定の財産を遺贈するものにすぎないという見解です。要するに,前記の実務的取扱いを認めないという見解です。

特定遺贈説は,遺産分割を経ずに相続開始時に特定の財産が特定の相続人に承継されるというのは,遺産分割手続を定める法の趣旨に沿わず,また,そもそも遺産分割方法の指定とは特定の財産を特定の相続人に承継させるというものではないということなどを根拠としています。現在でも有力な学説です。

特定遺贈説によれば,受贈者である相続人は,相続開始によってその遺贈財産の所有権を取得できます。ただし,所有権移転登記をするには他の共同相続人の協力が必要となります。

遺産分割効果説(判例・通説)

現在の判例・通説は,遺産分割効果説です。判例でいえば,最高裁判所第二小法廷平成3年4月19日(民集45巻4号19頁)です。

これは,相続させる旨の遺言とは,遺言で遺贈であるといえるような事情の無い限り,原則として遺産分割方法の指定であるとします。

ただし,遺産分割方法指定説とは異なり,相続人間でこの遺言と異なる遺産分割をすることはできず,遺言の効力発生時に,対象となる遺産が特定の相続人に承継されるとする見解です。

現在では,この判例に従って実務が動いています。

したがって,相続させる旨の遺言がなされた場合には,それに反するような遺産分割はできなくなります。

しかも,遺産分割を待つまでもなく,遺言の効力発生時(通常は相続開始時)に,その遺言どおりに特定の財産が特定の相続人に承継されるという効果が発生することになります。

そして,その特定財産の承継を受けた相続人は,その財産が不動産であれば,単独で所有権移転登記ができるということになります。

「相続させる」旨の遺言と第三者対抗要件の要否

前記のとおり,遺産分割効果説によれば,遺言の効力発生時に,その遺言どおりに特定の財産が特定の相続人に承継されるという効果が発生するします。

この,承継を受けた相続財産が不動産であった場合,承継を受けた特定の相続人は,遺言によって取得した不動産を,登記なくして第三者に対抗できると解されています(最二小判平成14年6月10日)。

もっとも,登記が具備されていないのに,すべて第三者に対抗できるとしたのでは,登記による公示を信頼して取引をした第三者に不利益をもたらすおそれがあり,取引の安全を害します。

そのため,平成30年7月に成立・公布された民法(相続法)改正においては,法定相続分を超える部分を承継した場合,その法定相続分を超える部分については,登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないものと規定されることになっています。

この改正相続法はまだ施行されていませんが,2019年7月13日までには施行されます。

したがって,相続させる旨の遺言(改正法では「特定財産承継遺言」と定義されています。)により法定相続分を超える不動産を取得したことがある相続人の方は,万が一に備えて,上記施行の日までには相続登記をしておいた方がよいかもしれません。

>> 相続法の改正(法務省サイトから)

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