遺産相続の基本・基礎知識

相続欠格者を赦す(宥恕する)ことはできるか?

相続欠格事由がある者を被相続人が赦し(宥恕し)て,その相続欠格者の相続人の資格を認めることができるのかという問題があります。ここでは,相続欠格者を赦す(宥恕する)ことができるかについて,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

相続欠格者の宥恕(ゆうじょ)

民法で定められた一定の事由(相続欠格事由)がある場合,法定相続人であっても相続権を失う場合があります。相続欠格事由がある場合,その事由のある相続人は相続を受けることができなくなります。

ここで問題となるのは,被相続人が,その相続欠格事由のある相続人に対し,宥恕(ゆうじょ)を与えた場合です。宥恕とは,赦すという意味です。

つまり,被相続人が,相続欠格者を赦し,相続を受けてもよいという意思表示をした場合,はたしてその相続欠格者である相続人は相続権を回復することができるのか,ということが問題となってきます。

相続欠格者の宥恕に関する各見解

相続欠格事由がある場合に,その相続欠格者がなぜ相続権を失うことになるのかという点について,判例(最二小判昭和56年4月3日最三小判平成9年1月28日等)は,民法891条5号の事案ですが,「遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対して相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課そうとするところにある」としています。

この趣旨は,5号以外の民法891条各号にも当てはまると考えられますので,判例は,相続欠格事由の趣旨につき,相続制度という公益的な制度の基盤を侵害する行為に対する民事的制裁と捉えていると解釈することができます。

そうすると,公益的な制度侵害に対する民事上の制裁と考えるのですから,(犯罪ではないですが,それと近い考え方として)被相続人の意思に関わりなく制裁を与えるべきであるということになります。

つまり,仮に被相続人が宥恕を与えたとしても,相続欠格者は相続権を回復しないと考えるということです。

他方,そもそも法が遺言という被相続人の意思を尊重する制度を定めている趣旨からして,相続においては,被相続人の財産処分の意思は最大限尊重されるべきであるというように考えるならば,相続欠格者を宥恕するという被相続人の意思も最大限尊重されるべきということになります。

したがって,この考え方によれば,被相続人が相続欠格者を宥恕したならば,相続欠格者の相続権は回復されるという考え方につながるでしょう。

相続欠格者の宥恕の可否

前記のとおり,民事上の制裁の面を重く捉えるか,被相続人の意思の尊重を重く捉えるかによって,結論がことなってきます。

この点について明確に判示した判例は今のところありませんが,学説では両論あり,被相続人の意思の尊重を重く見て,相続欠格者に対する宥恕によって相続権も回復されるという見解が有力とされています。

もっとも,この有力説に対しても,それならば生前に遺贈しておけば足りるのであって,あえて宥恕を有効とする必要はないのではないかという反論もなされています。

ただし,遺贈ということになると,遺留分の問題は発生してくるでしょう。この点については,まだ定まった見解はないといってよいでしょう。

私見としては,被相続人の意思は最大限尊重されるべきですが,やはり制裁的要素は加味すべきと考えられますので,被相続人の方が相続欠格者を宥恕する場合には遺贈の方法をとり,制裁については遺留分によって調整するのが妥当ではないかと考えられます。

このページのトップへ

弁護士による相続・遺言のご相談

このページのトップへ